アルテミスはなんの神?と疑問に思い、検索された方も多いかもしれません。
ギリシャ神話に登場するアルテミスは非常に多面的な神です。
また、多くの別名とその意味や、彼女の弓に名前はあったのかといった細かな点も見ていきましょう。
よく混同されるアルテミスとテミスの違いとは何かについても触れていきます。
さらに、アルテミスは何をした神ですか?という視点から、有名な逸話を紹介します。
処女神としての厳格な性格が表れる彼女のタブーとアクタイオーンの悲劇や、オリオンとの関係と星座の伝説など、彼女の魅力を深掘りします。
・アルテミスの厳格な性格がわかる神話や伝説
・他の神々(テミスやアポロン)との違いや関係性
・アルテミス信仰や現代への影響
アルテミス なんの神?その答えと神話
・処女神としての厳格な性格
・月の女神と呼ばれる理由
・多くの別名とその意味
・彼女の弓に名前はあったのか
・アルテミスとテミスの違いとは
どのような神ですか?

アルテミスは、ギリシャ神話における「狩猟」「貞潔(純潔)」「出産」を司る女神です。
彼女の出自は、最高神ゼウスと女神レートーの娘であり、太陽神アポロンとは双子の兄妹(または姉弟)とされています。
神話によれば、母レートーがヘラの嫉妬によって出産場所を探し放浪した際、オルテュギアー島(またはデーロス島)で最初にアルテミスが生まれ、生まれたばかりの彼女が母の助産婦役を務め、次にアポロンが生まれたと伝えられています。
この逸話から、彼女は出産や妊婦の守護神ともされるようになりました。
主な活動の場は山や森で、ニュムペー(精霊)たちを引き連れて狩りをする姿が多くの神話や芸術作品で描かれています。
ローマ神話においては、「ディアナ(Diana)」と同一視されました。
アルテミスの原像
アルテミスは、古くは山野の女神であり、野獣(特に熊)と深い関わりがあったとされます。
アテーナイ(アテネ)では、少女たちが熊を真似て踊る祭儀があったことからも、その繋がりがうかがえます。
ギリシャ固有の神ではなく、先住民族の地母神的な信仰が取り入れられた結果、多面的な神格を持つようになったと考えられています。
処女神としての厳格な性格

アルテミスを語る上で欠かせないのが、「処女神」としての側面です。
幼い頃に父ゼウスに対し、「永遠の処女であること」を願ったとされています。
この純潔へのこだわりは非常に厳格なもので、自らの純潔だけでなく、仕えるニュムペーたちにも同じく純潔を求めました。
この厳格な性格は、時に恐ろしい罰となって現れます。
- カリストーの悲劇:アルテミスに仕えていたニュムペーのカリストーが、ゼウスの策略によって純潔を失い妊娠した際、アルテミスは激怒。彼女を追放し、牝熊の姿に変えた(一説ではヘラやゼウスが変えたとも)とされます。
- ニオベーへの罰:テーバイ王妃ニオベーが、自身の子どもたちがアルテミスとアポロンの二人しかいないレートーよりも優れていると自慢した際、母を侮辱されたことに激怒。アポロンと共にニオベーの子どもたちを次々と弓矢で射殺しました。
このように、アルテミスの性格は、弱き者を守る守護神としての優しさと、掟を破る者や自身を侮辱する者を許さない苛烈さを併せ持っています。
月の女神と呼ばれる理由

アルテミスは「月の女神」としても広く知られていますが、これは神話が時代と共に変遷する中で後から加えられた神格です。
元々、ギリシャ神話における「月」の女神は「セレーネー」でした。
この流れと対になる形で、アルテミスもまた月の女神セレーネーと同一視されるようになったのです。
このため、アルテミスは「天上の月(セレーネー)」、「地上の狩人(アルテミス)」、「冥界の力(ヘカテー)」という三つの側面を持つ女神(三形態の女神)と考えられることもあったのです。
現代への影響:アルテミス計画
NASA(アメリカ航空宇宙局)が進めていた有人月面探査計画が「アルテミス計画」と名付けられているのは、この「月の女神」としての側面に由来します。
かつてのアポロ計画(アポロン)に続く計画として、双子の女神の名が選ばれました。
多くの別名とその意味

アルテミスは、その多面的な神格や行動から、多くの「添名(そえな)」や「異名」を持っています。
これらの名前は、彼女のどのような側面が信仰されていたかを示しています。
例えば、弓矢と関わるものとして「矢をそそぐ女神(イーオケアイラ)」や「金の矢を射る者(クリューセーラカトス)」と呼ばれることがありました。
また、疫病や死をもたらす恐ろしい側面として「女破壊者(アポロウーサ)」という添名も持っていたとされます。
たくさんの別名があるんですね!場所によっても呼び名が違ったのでしょうか?
その通りです。
特に有名なのが、小アジア(現在のトルコ)の古代都市エペソス(エフェソス)のアルテミスです。
エペソスのアルテミス:豊穣の地母神
エペソスはアルテミス崇拝の一大中心地で、古代世界の七不思議の一つにも数えられる壮大な「アルテミス神殿」がありました。
しかし、ここで崇拝されていたアルテミス像は、ギリシャ本土の狩人の姿とは全く異なります。
胸部に卵形(または乳房、あるいは生贄の牡牛の睾丸とも)の装飾を多数つけた姿で表現されており、これは植物や動物の豊穣、多産を司る「地母神」としての性格が強く出たものです。
ギリシャの処女神アルテミスとは異なり、アナトリア地方の地母神キュベレーなどの影響を受け、独自の信仰形態が形成されたと考えられています。
彼女の弓に名前はあったのか

ギリシャ神話では、神々や英雄が持つ武器に固有の名前が付けられること(例えば、ゼウスの雷霆アイギスなど)がありますが、アルテミスの弓矢に固有の名前があったという記述は、主要な神話では確認されていません。
しかし、彼女の弓は非常に特別なものです。
幼いアルテミスが父ゼウスにねだったものの一つであり、一説ではキュクロープス(サイクロプス)族によって鍛えられたとされます。
この弓から放たれる矢は、獲物を射るだけでなく、時には疫病をもたらしたり、産褥(さんじょく)の女性に苦痛のない安らかな死を与えたりする力も持っていたと伝えられています。
アルテミスとテミスの違いとは

アルテミス(Artemis)とテミス(Themis)は、名前が似ているため混同されやすいですが、ギリシャ神話において全く異なる役割を持つ別の女神です。
一番の違いは、その「世代」と「司るもの」です。
| 項目 | アルテミス (Artemis) | テミス (Themis) |
|---|---|---|
| 神格 | 狩猟・貞潔・月・出産の女神 | 法・掟・秩序・正義の女神 |
| 世代 | オリュンポス十二神(ゼウスの子供) | ティターン神族(ゼウスの先代) |
| 家族関係 | 父:ゼウス、母:レートー 双子の兄弟:アポロン | 父:ウーラノス、母:ガイア ゼウスの2番目の妻(一説) |
| 象徴 | 弓矢、鹿、熊、糸杉 | 天秤、剣、目隠し |
アルテミスがゼウスの娘世代であり、自然界や個人の純潔に関わる神であるのに対し、テミスはゼウスよりも古いティターン神族の女神です。
テミスは「法」や「秩序」そのものを神格化した存在であり、ゼウスの傍らで神々の世界の秩序維持を助けました。
裁判所などで見かける「目隠しをして天秤を持つ女性」の像は、このテミス(またはローマ神話のユースティティア)をモデルにしています。
アルテミスがなんの神か分かる逸話
・彼女のタブーとアクタイオーンの悲劇
・オリオンとの関係と星座の伝説
・まとめ:アルテミス なんの神か解説
何をした神ですか?逸話を紹介

アルテミスの神格は、彼女が登場する様々な逸話(神話)によって具体的に理解することができます。
前述の「カリストー」や「ニオベー」のエピソード以外にも、彼女の行動が物語の鍵となる話は多く存在します。
トロイア戦争とアガメムノン
ギリシャ神話最大の戦争であるトロイア戦争の際、アルテミスはトロイア側に味方しました(双子の兄弟アポロンがトロイアの守護神であったため)。
ギリシャ連合軍の総大将アガメムノンが、出航前にアルテミスの聖域で聖なる鹿を殺し、さらに「アルテミス本人より狩りが上手い」と自慢したことに激怒。
アルテミスは風を止めてギリシャ艦隊の出航を妨害しました。
神の怒りを鎮めるための神託は、「アガメムノンが自身の娘イーピゲネイアを生贄に捧げること」でした。
アガメムノンは苦悩の末に娘を犠牲にしようとしますが、寸前でアルテミスが娘を哀れみ、代わりに鹿を生贄として彼女を助け、自身の神官にした、とも伝えられています。
ヘラクレスの試練
英雄ヘラクレスの「12の功業」の中にもアルテミスは登場します。
3番目の試練は「ケリュネイアの鹿」を生け捕りにすることでした。
この鹿はアルテミスの聖獣であり、黄金の角と青銅の蹄を持っていました。
ヘラクレスは1年かけて鹿を追い、捕らえることに成功しますが、その帰路でアルテミスとアポロンに遭遇します。
アルテミスは聖獣を傷つけた(または捕らえた)ことに激怒しますが、ヘラクレスが王の命令による試練であることを説明すると、彼を許しました。
彼女のタブーとアクタイオーンの悲劇
アルテミスの厳格な性格を最も象徴し、彼女のタブーを破った者の末路として最も有名な逸話が「アクタイオーンの悲劇」です。
テーバイの狩人アクタイオーンは、ある日、猟犬たちと狩りをしている最中、偶然にも森の泉でアルテミスがニュムペーたちと水浴びをしている場面に遭遇してしまいます。
彼は、女神の裸の姿を「見てしまった」のです。
純潔の女神の怒り
アルテミスの裸身を見ることは、彼女の純潔を汚す最大のタブーでした。
激怒したアルテミスは、アクタイオーンに泉の水を振りかけ、彼を一頭の鹿の姿に変えてしまいました。
鹿に変えられたアクタイオーンは、言葉を発することもできず、山へと逃げようとします。
しかし、彼が連れていた50頭の猟犬たちは、主人の姿が分からず、鹿を獲物と誤認して襲いかかりました。
アクタイオーンは、自ら育てた猟犬たちによって無残にも引き裂かれ、命を落としたのです。
この物語は、神の領域を侵すことの恐ろしさと、アルテミスの純潔への厳格な姿勢を強く示しています。
オリオンとの関係と星座の伝説

厳格な処女神アルテミスですが、唯一、狩人オリオン(オーリーオーン)に対してだけは、恋愛感情に近い親愛の情を抱いたとされています。
しかし、この関係もまた悲劇的な結末を迎えます。
オリオンは海神ポセイドンの息子で、ギリシャ随一の狩人でした。
狩猟の女神アルテミスと優れた狩人オリオンは、共に狩りをするうちに親しい仲となります。
アポロンの策略
二人の関係を快く思わなかったのが、アルテミスの双子の兄弟アポロンです。
彼は、純潔を司る女神である妹が恋愛にうつつを抜かすことを許せませんでした。
ある日、アポロンは、遠くの海で泳いでいたオリオン(頭部だけが水面に見えていた)を指さし、アルテミスに向かって「あれを射抜くことはできないだろう」と、彼女の弓の腕を挑発します。
負けん気の強いアルテミスは、それがオリオンとは気づかず、見事に矢を放ち、的(オリオンの頭)を射抜いてしまいました。
翌日、浜辺に打ち上げられた遺体を見て、アルテミスは自らの手で愛する人を殺めてしまったことを知り、深く悲しみます。
さそり座の伝説
オリオンの死については異説もあります。
一説では、オリオンが「地上の全ての獣を狩り尽くす」と豪語したため、大地の女神ガイア(またはアポロン)が怒り、一匹のサソリを送り込んで彼を刺し殺した、とも言われます。
アルテミスは父ゼウスに懇願し、オリオンを天に上げて「オリオン座」にしました。
しかし、彼を殺したサソリもまた「さそり座」として天に上げられたため、今でもオリオン座は、さそり座が空に昇ってくると、それから逃げるように西の空に沈んでいくと伝えられています。
まとめ:アルテミス なんの神か解説
この記事では、「アルテミス なんの神」という疑問について、彼女の多様な側面と神話を紹介してきました。
最後に、アルテミスに関するポイントを整理します。
- アルテミスはギリシャ神話のオリュンポス十二神の一柱
- 主に「狩猟」「貞潔(純潔)」を司る女神
- 「出産」や「妊婦」の守護神でもある
- 父はゼウス、母はレートー、双子の兄弟にアポロンがいる
- ローマ神話では「ディアナ」と呼ばれる
- アテーナー、ヘスティアーと並ぶ三大処女神の一人
- 純潔を重んじ、掟を破る者には厳格で苛烈な罰を与えた
- 「月の女神」とも呼ばれるが、これは後にセレーネーと同一視されたため
- NASAの月探査計画「アルテミス計画」の名前の由来となった
- エペソスでは「豊穣の地母神」として異なる姿で崇拝された
- 弓矢に固有の名前は確認されていないが「黄金の弓矢」を持つ
- 「テミス」は法と秩序を司るティターン神族で、アルテミスとは別の神
- 神話では聖なる鹿を殺したアガメムノンを罰した
- 水浴びを覗き見たアクタイオーンを鹿に変え、猟犬に殺させた
- 唯一愛したとされる狩人オリオンを、アポロンの策略で自ら射殺してしまった
- オリオンは天に上げられオリオン座になった
